日本語教育グローバルネットワーク(GN)には、日本語教育の研究・教育の交流と促進を目的に、世界12の国・地域の学協会が参加しています。GNプロジェクトは、加盟団体のうち2団体以上が参画するプロジェクトで、日本語教育グローバルネットワークによる承認を受け、遂行されています。
CAJLEは2015年まで「日本語教育アーティキュレーション・プロジェクト(J-GAP)」に参加し、2016年より「日本社会におけるトランスランゲージングの促進」プロジェクトを計画、実施しています。
米本和弘(東京医科歯科大学)
柴田智子(プリンストン大学)
川口真代(トロント大学)
津田麻美(コロンビア大学)
林寿子(サイモンフレーザー大学)
色々な言語や文化にルーツを持っている人、日本語を学んでいる人、日本で働く人々、日本に興味のある人たちなど、「日本語=日本人」ではなく、私たちの周りには様々な「日本語話者」がいると思います。しかし、そのような多様な日本語使用者は社会において、どの程度意識され、またどのように認識されているでしょうか。本プロジェクトでは、多様な日本語使用者の「声」を集め、日本語にまつわる様々な考え方や経験について理解を深めることを目的としています。
多様性と調和が謳われている2020年の東京オリンピックは言うまでもなく、言語的・文化的に多様な人々がともに暮らす日本社会において、日本語や日本語話者に対する理解の育成・促進は、全ての人にとってよりよい社会の構築に資することにつながると考えています。
日本語教育グローバルネットワーク(GN)には、日本語教育の研究・教育の交流と促進を目的に、世界12の国・地域の学協会が参加しています。GNプロジェクトは、加盟団体のうち2団体以上が参画するプロジェクトで、日本語教育グローバルネットワークによる承認を受け、遂行されています。
CAJLEは2015年まで「日本語教育アーティキュレーション・プロジェクト(J-GAP)」に参加し、2016年より「日本社会におけるトランスランゲージングの促進」プロジェクトをヨーロッパ日本語教師会とともに計画、実施しています。
本プロジェクトの目的は日本語によるコミュニケーションにおいて、これまで当たり前に捉えられてきた母語話者を中心とした一元的な言語観に疑問を投げかけ、日本語や日本語による言語活動の多様性に対する柔軟な理解を育成・促進することにあります。多様な日本語使用者には様々な地域、文化圏で学んだ日本語学習者も含まれます。これらの日本語使用者にとって、日本語は多様な言語活動の一環であり、彼らが総合的に持っている「言語」自体でもあります(García, 2009)。
こうした言語や言語活動について理解を深めるためには、単に多言語化を意識することにとどまらず、日本語によるコミュニケーションを社会一般においてより広義に認識することにつなげていくことが必要です。また、こうした社会における理解のための発信に日本語教育関係者が積極的に関わっていくことが必要であると考えています。
リソースの作成 |
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本プロジェクトでは、多様な日本語を認める言語観を育成・促進するという目的の下、そのためのリソース、およびその使用例を作成しています。最終的には、これらを用いたワークショップなどの開催も行う予定です。 |
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1. | 多様な日本語話者に対してのインタビュー | |||
目的: | 多様な言語観や言語使用について理解ができるよう可視化すること | |||
対象: | 国内外の留学生、地域在住の非母語話者(ビジネス、在住者)、非母語話者と接触のある母語話者など | |||
内容: | 日本語の学習歴・使用環境、日本語使用に対する考えや経験など | |||
2. | インタビューをもとにしたウェブサイトの作成 | |||
「セカイの日本語〜みんなの声〜」 | ||||
リソースページ(各話者の再構築されたストーリー+短い動画クリップ数本) | ||||
3. | リソースの使用例の作成 | |||
プロジェクトの背景やコンセプトの解説(言語教育、応用言語学など) | ||||
カナダ内外での授業や研修会などで考えられる用途について意見交換等を含む使用例構築のためのワークショップ開催 |
2020年中のプロジェクト完了を目指し、現在、リソースの作成を行っています。複数の日本語使用者にインタビューを実施し、そのうち数人のストーリーをウェブサイトに掲載しています。現在は引き続きインタビューを行うとともに、それらのインタビューで得られたストーリーをリソースとして再構築する作業を行っています。
また、これらのリソースをどういった目的で、どのように使用できるのかといった使用例に関しても掲載を目指して検討を行っています。そして、2019年中には、これらのリソースと使用例を用いてカナダ国内外で本プロジェクトについてのワークショップを実施する予定です。
現在、本プロジェクトに興味がある方の参加を歓迎しています。参加にはリソースの作成やワークショップ実施など様々な形が考えられますので、CAJLEウェブサイト内のプロジェクトのページをご覧いただくか、メール(cajle.project@gmail.com)でお気軽にご連絡ください。
本プロジェクトの一部はJSPS科研費 16K21018の助成を受けています。
林寿子(CAJLE理事)
4月7日カールトン大学にて「セカイの日本語〜みんなの声〜日本
前半の理論背景では、バイリンガリズムの概念が言語1(
後半のリソースは日本語使用者の日本語・
参加者の方からのアンケートでは、ワークショップ全般において自
川口真代(トロント大学OISE)
5月12日にCAJLEにおけるGN(日本語教育グローバルネットワーク)プロジェクトの一環として国際交流基金トロント日本文化センターにてワークショップを行いました。これまでプロジェクトがインタビューによって集めてきた様々な日本語使用者の声を、いかにリソースとして多言語社会での理解やコミュニケーションに役立てていくことができるかを話し合いました。まず、日本語コミュニケーションにおける母語話者を中心とした一元的な言語使用への見方にはどのようなことが影響しているのか、私たちの身近にいる様々な日本語使用者とその言語使用について参加者と振り返ってみました。またバイリンガル教育の分野において従来の言語自体に重点を置いた考え方が、言語使用者自身の「ことば」を中心とした視点に変化してきていることをトランスランゲージングの理論を取り上げながら説明しました。後半はプロジェクトがウェブサイト(https://sekainonihongo.com/)に掲載しているインタビューを見ながらディスカッションを行いました。参加者からは自身の体験と合わせて振り返る機会になった、他の人の意見や経験に対する捉え方を知ることができて良かったといった感想をいただきました。会を通して、実際にリソースを使う場を設けることが個人の問題意識に働きかけ、参加者全体で議論を共有していく活動につながると感じました。次回のワークショップはバンクーバーで8月に開催を予定しています。
本ワークショップはCAJLE地域研修会支援および国際交流基金トロントのご助力をいただきました。ありがとうございました。
米本和弘(東京医科歯科大学)・川口真代(トロント大学OISE)
8月9日、
前半は、本プロジェクトの中心的概念であるWorld Japanesesについて、
さらに後半は、参加者の皆さんに本プロジェクトで作成しているウェブサイト「セカイの日本語」
本ワークショップは公益財団法人博報児童教育振興会による第14回児童教育実践(日本語と日本語話者の多様性に対する小学生の理解育成のための実践モデル構築)の研究助成、バンクーバー日本語学校のご協力を得て実施しました。ありがとうございました。
柴田智子(CAJLE副会長・プリンストン大学)
2019年8月29日〜31日にセルビアのベオグラードで開かれたヨーロッパ日本語教師会(AJE)の第23回ヨーロッパ日本語教育シンポジウムに参加し、大会2日目にポスター発表をし、同日にワークショップを行いました。
ポスター発表は昼前のセッションで、小さめの教室3つに5つずつポスターが分けられていたため、ゆったりとしており、見学者も質問がしやすい環境でした。私たちのポスターにも多くの見学者が来て、少なくとも5、6回、プロジェクトの内容について説明をすることができました。全部で30人くらい(日本からの先生とヨーロッパの先生が半々くらい)が聞いてくださいました。
ワークショップは同日の昼から階段教室で行いました。内容はポスター同様、本プロジェクトで作成しているウェブサイト「セカイの日本語」の紹介と、参加者自身の経験、ウェブサイトの使用方法についての意見交換を行いました。会場が非常に広く、マイクがないと声が聞こえなかったため、ディスカッションでの意見を全体でシェアするのは難しかったのが残念でした。しかし、昼食時と重なっていたため、食事をしながらワークショップに参加してくださった人は40−50人くらい(日本からが半分くらい、ヨーロッパからが半分くらい)にもなりました。また、昼食時とは言え、途中退席する人はほとんどおらず、ディスカッションの時間も近くの人たちと活発に意見交換をしていただけました。ファシリテーターの私は歩き回って話している内容を聞き、マイクで全体でシェアをしました。シンポジウムの基調講演者の一人である岩﨑先生も手伝ってくださり、話し合いに参加してくださいました。40分のワークショップで多くの参加者にこのウェブリソースの存在を認識していただき、また、このプロジェクトの宣伝もしっかりすることができました。
このポスター発表とワークショップで多くのコメントやアドバイスをいただきました。例えばワークショップを日本語教育以外の層もターゲットにすること、ワークショップを日本で開催すること、ウェブ公開期限についてなどです。これらの意見をプロジェクトチーム内で話し合い、日本でのワークショップの具体化に向け準備を進めています。ウェブサイト公開期限についてもCAJLE内で話し合いが進んでいます。
さらに今回、ヨーロッパで新たなコネクションができ、それを通して、より多様な人々の「声」を集める機会が出てきました。チームで協力し、その「声」を集めていく予定です。
本ワークショップは公益財団法人博報児童教育振興会による第14回児童教育実践(日本語と日本語話者の多様性に対する小学生の理解育成のための実践モデル構築)の研究助成、ヨーロッパ日本語教師会・南山大学の岩﨑典子先生のご協力を得て実施しました。ありがとうございました。
米本和弘(東京医科歯科大学)
柴田智子(プリンストン大学)
川口真代(トロント大学)
津田麻美(コロンビア大学)
林寿子(サイモンフレーザー大学)
岩﨑典子(ロンドン大学アジア・アフリカ学院)
マルチェッラ・マリオッティ(ヴェネツィア・カフォスカリ大学)
尾辻恵美(シドニー工科大学)
中根育子(メルボルン大学)
本プロジェクトの目的は日本語によるコミュニケーションについて、これまで当たり前に捉えられて
きた母語話者(日本語を母語とする人)を中心とした一元的な言語観に疑問を投げかけ、多様な日本語を認める言語観を育成・促進することにあります。多様な日本語の話者には様々な地域、文化圏で日本語を学んだ日本語学習者も含まれます。これらの多言語話者である日本語使用者にとって、日本語は多様な言語活動の一環であり、彼らが総合的に持っている「言語」自体でもあります (García, 2009)。
こうした多言語話者の言語使用と言語観について理解を深めるためには、単に多言語化を意識することに留まらず、日本語によるコミュニケーションを社会一般においてより広義に認識することにつなげて行くことが必要です。また、こうした多言語話者を含めた日本語使用者それぞれが主体的に発信すること(活動としてのトランスランゲージング)を促進していくことは、言語・文化的な差異に対応できる寛容性を持った社会環境の構築に寄与できると考えています。
リソースの作成Resource Development本プロジェクトでは、多様な日本語を認める言語観を育成・促進するという目的に則り、そのためのリソース、およびその使用例を作成しています。
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1.多様な日本語使用者のリソース作成
A)日本語使用者のリクルート
– 日本国外の非母語日本語使用者(学生他)
– 学生以外の日本滞在の非母語日本語使用者
– 一般のイメージとは異なる日本語母語話者(“ハーフ”や日本生まれの外国人)
B)日本語使用者へのインタビュー
– 30-45分程度のインタビュー×2回
– インタビュイーへの謝金のための予算あり
C)インタビューデータの編集
– ストーリーの再構成+ビデオの切り出し
2.リソースの使用例の検討
・使用例の作成(オンラインでのチーム作業)
3.ワークショップの実施
・ワークショップの共同開催など
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